三 我が愛する常念岳、蝶ヶ岳

吉川 正裕

 
桜と常念岳 登山口安曇野より 五月四日

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 前常念岳 ・常念岳
豊科の谷合、三股に車で着いたのは深夜十二時、駐車場はすでに満車状態だ、適当な空き地を見つけ駐車し仮眠する。
 5時起床、仰げば満天の初秋の星座が谷合に広がっている。左に快いせせらぎの音を聞きながら、平坦な沢道をしばらく進むと道が二つに分かれている。左が蝶ケ岳へと進む道のようだ、ほとんどの登山者は左へと向かっている、私が二日後に帰ってくる予定の道である。右に前常念岳を目指して夜露に濡れた登山道にとりつく。滑りやすく慎重に足を前へ運ぶ、日の出とともにヘリコプターの音が下から聞こえてきた、あとで分かったことだが遭難者が出ているらしい。
 樹林帯の急登は息が切れる、雲ひとつない秋晴れ、九時も過ぎると少し汗ばんでくる、ゆっくりと登って行く。からまつ林の樹林帯を抜け、ダケカンバが現れてくると蝶ヶ岳へ続く稜線が左前方に見えてくる。ハイマツの生い茂る森林限界を過ぎたところで、行く手に大きく展望が開け目の前に前常念岳がフッと顔を出す。右前方には前年日帰りで登った燕岳が見える。息をはずませ、汗を流した3時間あまり山を登る者に与えられた感動のひと時である。
 一息入れ汗が引いたところで、前常念最大の難所である岩場にとりつく。下を見れば目もくらむほどのすごい絶壁、標識が以外と少なく、すでに何度かコースを離れている。手がかりになる岩、そして足を置く適当な場所が見つけにくい。突っ立った状態でタテそしてヨコに這う、先ほどのヘリのことが脳裏をかすめる。本来ならばクサリ・ハシゴがあってもおかしくない。前方にはすでに何名かが岩場にとりついている。その中に六十才は過ぎたであろうとおぼしき男性が同じく頂上を目指している。かなりの登山経験者らしく靴、そして装備からそれとなく分かる。頃合いを見はからって一息入れた岩の上で話す。前常念は初めてだと言う、出てくる言葉は、きつい・きついだけが返ってきた。軽い砂場の斜面だがそれゆえ足を滑らせればそれこそ止まることなく一瞬にして体が空を飛ぶことになる。頂上での再開を約束して、慎重に登って行く。
 時刻は十一時を廻ったが下山者がほとんど無い、これまでの経験から行くと不思議であり珍しい、すれ違いざまのおはようの挨拶を交わしたのも数名しかいない。正午前、前常念の三角点に立つ。梅干し入りのおにぎり2個と「お〜いお茶」で少し早い昼食を取る。ペットボトルだが、山登りにはたいへん重宝する。
 それにしても素晴らしい眺望である、左から御岳、乗鞍岳、穂高連峰、後立山連峰そして燕岳から白馬、鹿島槍、さらに目を右へ移せば雨飾、妙高、戸隠・・浅間山・美ヶ原・・。ここはアルプス大展望台の上等地である。
正面には三角錐の常念岳が優しく立ちすくんでいる。右に軽い下りの巻き道を選んで常念小屋を目指す、登山道は所々沢が崩れてはいるものの危険なところはない。日が当たらない所には霜柱が残っている。予定通り3時に常念小屋に到着し、早々に宿泊の手続きを済ませたけれどこれが運命の始まり地獄になろうとは!!。
 ううぅ、、、、、、。8畳間に、なんと宿泊者○○人。畳1枚に○人が寝る。ああぁーーーーー。
 次回の更新をお楽しみに・・・続く。
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